家を売る。
私達夫婦の住む家は、11年前に中古で購入し、当時建築学科の学生だった次女が、卒業制作課題としてリノベーションしたものです。
常時酸素ボンベ用カートが必要で、近々車いすでの移動になると診断された母が暮らせる環境ではなく、
住み替えのための売却をする決心をしたその日に、
「購入した当時の価格と比べて、今はどんなふうなんだろう・・・」と、
気軽な気持ちで、インターネットの無料査定をしてみることにしました。
連絡先情報欄に、電話番号の登録も必須となっていたので、
【査定結果は、メールでお伝え下さい。】と、備考欄に記入していたにもかかわらず💦
査定依頼フォームを送信した直後から、いろんな不動産会社(着信履歴で検索して調べました)から、ひっきりなしに、電話がかかり始めました+_+;
「なんなん?!(by 藤井風)そんな一瞬のうちに、査定ってできるものなん?!」
「メールでお願いしますって、お願いしたじゃん?!」
と、安易に査定依頼をしたことを後悔していたら、
翌日、添付ファイル付きのメールが届きました。
とある不動産会社の、支店長さんからのメールで、
『メールでのご連絡をご希望でしたので、査定内容を送信いたします。』
と、
査定金額とともに、その根拠が、多岐にわたって、とても丁寧に説明されていました。
そして、最後に、
『ただし、不動産会社は、価格の根拠指標をお示しするだけで、あくまでも価格を決定されるのは、売り主様です。
また、お時間がおありでしたら、多くの不動産会社を比較検討され、信頼できる会社をお選びいただきますことをおすすめいたします。』
と記されていました。
「この会社で、もう少しお話を聞いてくる。」と言うと、夫も賛成してくれました。
そんな経緯で、昨日、メールの主である支店長さんを訪ね、2時間近くお話をさせていただきました。
本当に沢山のアドバイスをいただき、
なんだか大船に乗ったような気持ちになりました。
この週末に、夫と共に、再度お話を詰めさせていただき、媒介契約の手続きをしていただく旨の結論になったところで、
「やはり、家屋は取り壊し・・ということになりますか?」
と尋ねると、
「そうですね・・・ もう随分築年数も経っていらっしゃるのと、立地条件からすると、中古戸建として売却されるよりも、準工業地域の土地として売却される方が、価格が伸びる物件ですから・・・」
「わかりました。でも、私、自分で業者さんにお願いして自宅を解体していただくことはできそうにないんです。
実は、娘と娘の友人達がリノベーションしてくれた家で、思い入れがあって・・・」と言うと、
「そうだったんですか。かしこまりました。お気持ちはとてもわかります。それでは、購入者側で解体工事はする・・という条件にしましょうね。」と、言っていただきました。
帰宅し、冷蔵庫からパピコを取り出して、口にくわえたまま、
家の中を歩き回りました。
あちらこちらに、地下足袋で作業していた娘の姿が思い出されました。
「お母さん、そこに立ってみて。 お母さんの動線を考えて、キッチンの配置を決めなきゃだから・・・」という声も。
11年経っても鮮明に蘇る記憶に、『きっと、この家がなくなっても、記憶は残るから大丈夫・・・』と、自分に言い聞かせました。
【最後とは、知らぬ最後が過ぎてゆく・・・】
俵万智さんがうたったように、「これが最後・・」と自覚のないまま、最後の時を迎え、そして過ぎ去ってしまうこともあれば、
「最後の日」に向って、覚悟を決め、心を整理していく巡り合わせもあり、
どちらも、切ないなぁ・・と思います。
父も、弟も、なんの覚悟もできないまま、あっという間に見送ってしまって、
見送った後で、【最後】の会話や、表情を、一生懸命拾い集め、そこに何かのメッセージがなかったのか、何度も何度も、思い返しました。
この先、母と過ごす毎日は、
最後に向って、覚悟を決め、心を整理していく日々になるのでしょう。
今、家中に、娘がカンナをかける音や、
夫が、ドタバタ階段を降りる音や、
カメムシが大量発生して悲鳴を上げた日の記憶が渦巻いています。
母と過ごす日には、どんな思い出が浮かぶのか・・・
思い出を眺めながら、母と沢山の話をしたいと思います。
毎年、可愛い花を咲かせ、沢山の実をつけてくれたサクランボの木ともお別れです。
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